物語で出会う 会津ごころ story THAT LEAD YOU TO THE HEART OF AIZU

棚の奥で、
大事に大事にされてきた伝統を、
外の世界に出してあげたくて。

  • CATEGORY:伝統
  • THEME:工芸品
  • 話を聞いた人:ヒューマンハブ天寧寺倉庫 / 関美工堂 関昌邦さん

街の中至るところで歴史が色濃く感じられる会津若松だが、2022年、 “ヒューマンハブ天寧寺倉庫”という未来的な名前の複合施設が誕生した。

この大きな倉庫を改装した広い空間の中では、セレクトされた商品がずらりと並ぶライフストアを筆頭に、ベーカリー、シェアキッチン、シェアカフェ、工房、シェアオフィスなど様々な業態が運営されている。(まるで小宇宙のよう!)

ヒューマンハブ天寧寺倉庫の生みの親であり、その前身となる関美工堂(1968年、表彰楯のパイオニアとして創業)を引き継ぐ関昌邦さんにお話を伺えることになった。

「まずはこの施設についての話から始めて良いですか。」

いつの間にか用意されていた丁寧な資料を元に、その目的や全貌を語っていただく。

「会津の面白さを、再解釈したいんですよ。歴史ももちろんですが、漆も、木綿も、発酵文化も、まだまだ面白いと思われていないものがたくさんあるでしょう。ここでやりたいのは、会津に想像を膨らませるきっかけづくりです。」

そのきっかけの例として最もふさわしいのが、関さんご自身が立ち上げた「NODATE」というアウトドアブランドだ。

NODATEは「野点」に由来しており、屋外でお茶を点てて楽しむ文化を指す。

「会津塗という、漆器の伝統工芸品があるんです。高級品だから、ハレの日くらいしか使われる機会がなくて、最近じゃもうほとんどその機会も無くなってしまって。」

関さんが着目したのは、会津塗の漆。

本来、漆器は落としても割れないほどの強度があり、それでいて軽く、天然素材で殺菌性もある。劣化もしにくいという万能性を秘めた素材なのだそう。

「棚の奥で光を浴びすに、大事に大事にされてきた会津塗を、思い切って外の世界に引っ張り出しちゃえ!って。もっとカジュアルに使われてこそ、漆の持つ本来の強さや機能が果たされると思ってたんです。千利休がお茶を民主化したように、漆器の敷居をもっと下げてみるという試みでした。」

会津塗の新解釈。
こうして生まれた「NODATE」は、アウトドア好きの若者たちから天皇陛下まで、非常に幅広く注目される存在となった。現在では会津にルーツを持つ有名アーティストとのコラボなどを経て、会津塗の未来を想像させるアイコンとしてファンを増やしている。

「ちなみにNODATEのネーミングは妻のアイデアです(笑)。」

関さんが会津を語る視点は、聞く人誰をも惹きつけてしまう魅力で溢れている。「会津がこんなに面白いなんて知らなかった!」と、地元の人を含め、誰もが思うことだろう。この話題は、きっと100年後の未来まで尽きることはない。

彼は、その土地が持つ記憶を思いながら、誰よりも未来を見つめている。

「俺が面白いんじゃなくて、会津が面白いんですよ(笑)。」

(そう微笑む関さんは、JAXAの職員だったという驚くべき経歴を持っている。)


PLACE:

会津若松市天寧寺町7-38
最寄り駅:会津若松駅